2011年4月15日 金曜日
刑法を勉強しようブログ第2回 木村亀二先生
前回、木村亀二先生の「新刑法讀本」を読んでいることを書きましたが、その後、法律学全集の「刑法総論」も読んだので、両方の感想を書いてみたいと思います。
残念ながら私の持っている「新刑法讀本」は、昭和23年に出版された初版ではなく、昭和42年に出版された全訂新版です。初版は、木村先生が初めて出した総論も含めた体系書であり、のちに出版される有斐閣法律学全集の「刑法総論」で展開される目的的行為論を採用していなかったようなのですが、全訂新版では目的的行為論に立脚しています。
木村先生は、もともと法理学を専攻していたらしいのですが、九大事件で九州帝国大学を休職になったのち、牧野英一先生のもとで刑法学を研究していたそうです(西原春夫「木村亀二の刑法理論」『刑法理論の総合的研究』)。そのため基本的には新派刑法学の立場をとっていますが、新派と旧派の理論を総合したうえで、目的的行為論を採用しています。
「全訂新刑法読本」は、体系書というよりは読み物という印象であり、読みやすい本です。刑法の基本的な考え方をわかりやすく説明していたり、聖書や文学(トルストイなど)を引用したりしており、一般の読者を意識している本です。ただ、一通り刑法の勉強を終えた人には物足りないかもしれません。
有斐閣法律学全集の「刑法総論」は、逆に一般の人を全く意識していないようです。とても理論的に書かれていて読んでいて引き込まれます。理論的な文章とはどんなものか改めて思い知らされました。法律家として見習いたいところです。ただ、残念なのは、ページ数の都合か若干尻つぼみなことでしょうか。最初の100ページくらいまでが特にすばらしいので是非読んでいただきたいと思います。目的的行為論をとっている点や、錯誤論、責任概念、未遂犯、共犯などに新派の主張が残っていることから今これを基本書とするのは難しいですが、刑法解釈学に関する部分と刑法の概念に関する部分は、最近の本にはあまりきちんと書かれていないところなので、一度読んでください。